真心

なんかね、昔、実家に木でできた印鑑入れがあって。(今もあるんかどうかは知らん。)


印鑑と朱肉が一緒に収納できる、タバコの箱よりひとまわり大きいくらいのサイズの。

ちょっとチープな感じで、塗装とかもされてなくて、バルサ材みたいな質感の、すごい軽い感じで。

お通夜とか行くとその場でいただくお品(?)みたいなのあるじゃない? そういうところでもらってきた「朱肉セット」っぽい感じの。


でね。

ある日、突然、父がね、その印鑑入れにさ、筆ペンで

 真

 心

って書いてさ。

木でてきた印鑑入れの、ふたの真ん中に。ドーンと。


ちなみに、父はどちらかというと悪筆の部類で。

だから、書道の腕自慢とか、そういうんじゃないのね。

印鑑入れのデコレーションとしては、全然、成り立ってないし、そこを目指してないことは明らかなんだけど。


わたし、その書いてる瞬間、見てたんだけど。

その時は、「何?!(笑)”真心”って???!www」みたいな感じだったんだけど。

父も、「真心。そのココロは…」みたいにその真意を語ってくれるわけでもなく、ただ黙って書き終えて、ニヤニヤしてただけだったと思うんだけど。


なんか、それからずいぶん経ってさ、社会に出た後とかになってさ、しみじみ思い出されるんだよね。。。そのこと。

それが”真心”って言葉だったこととか、なんか、じわじわ沁みてくる感じっていうか。

わかる、とまではいえないんだけどさ。