不安を乗り越える瞬間。

がむしゃらな歴史の終着点って、「一縷」な気がする。


命綱というにはあまりにも結束点がない。右端にも左端にも。ともに溺れかけているような、単なる一片。そういうものでしかない気がする。


自分で自分にね、「じゃあさ、どうなったら安心なの?」って問いかけてみたときにね……


指きりしても、サインしても、誓い交わしても、弱み握り合っても、監視の目を増やしても、結局、結局のところ、未来が確定するわけではないんだよね。

進んでも進んでも、立ち止まればそこに新たな不安は生まれるわけで。


だからね、「握り締めるものを持つことの安堵」なのかなあって。結局は、そこにゆきつくのかなって。


その「一縷」を、手が傷つくくらい握り締めて、その状態で、やっとひらける感覚器がある気がする。

世界は不安に満ちているから。


もっとも、未知という不安の先には、もちろん、想定外のかなしみがある可能性もあるけれど、逆に、想像以上のよろこびが待っている可能性もあるわけで。

期待を裏切る出来事が抱いているのは、善でも悪でもないのにね……


その「一縷」は、なんというか、「鍵」のようなもので。

切符のようでいて、とくに権利というわけでもない。保証でもない。ただ、「鍵」でしかない。そんな気がする。