感情と思考のオリジン
かなり以前のことなんだけど。
「あなたの感情と思考をつくった作品を教えてください。作品の種類は、音楽でも文学でも何でもOK」みたいな質問に遭遇して。
自分では思ってもみなかったような質問だったから、ものすごく印象的だったんだよね。
そのときも、「質問なさってた方は、そもそもどういう作品を念頭においていたのだろう?」とか、しばらく考え続けてて。
随分時間が経った今でも、「あれって、結局、なんだったんだろう…」みたいに、ときどき思い出したりする。そういう質問で。
なんていうか、こういう瞬間に遭遇するのが、わたしにとってのコミュニケーションの醍醐味だったりするのね。(もちろん、コミュニケーションの醍醐味にはいろんなものがあるから、これだけじゃないんだけど。)
自分にはない視点に触れたときの違和感で、相手の輪郭(他人の感覚)を知り、自分の輪郭を知るというか……
で、この質問。
質問なさった方と似た感覚をもったひとは、「えっ?! この質問の何がそんなに意外なの??!」って、とくに悩まず即答できちゃうんだと思う。
ただ、わたしの感覚で考えると、「どの作品を選ぶか」で悩むどころか、そもそも前提となる作品自体が挙げられない、みたいな感じなんだよね。。。
”感情をつくった”という部分に思い当たる作品が、まず、まったく浮かばない。”思考をつくった”ものに当てはまるものを挙げていくと、それは教科書のような類のものになってしまい、「作品」ではない。。。
現実を分類・整理して理解する、その思考の枠組みになったもの……わたしにとって、それは教科書に近いものだったけれど。
なかには、哲学書や宗教書の古典からそういうものを受け取ってきた方もおられるのかな。。。
なんとか、無理矢理気味に「ものの見方自体に影響を与えた”作品”」をあえて挙げるとすると、わたしの場合、お菓子づくりの本になるかな。
電話帳のように厚い、全篇カラーのムックで、それこそ基本の「き」から、応用の凝ったレシピまで網羅されているもので。
それを「作品」といっていいのかはわからないけれど、ただ、編集方針に見るべきものがあって。デザインもみやすく、美しかったし。
ひとつひとつのレシピとは別に、解説ページが充実してて、冒頭には「料理は科学だ」という視点が明確に表明されてた。
ひとつひとつの工程の説明にしても、「小麦粉を練り混ぜてメレンゲをつぶすと、こうなる」みたいに、失敗の原因と防止の対策が「失敗したケーキの断面写真」とかを交えて、丁寧に解説されてて。
「”小麦粉をふるう”みたいな常識的手順が、なぜ常識的に盛り込まれているのか」とか、そのレシピをつくった先人の試行錯誤を、非常に論理的かつ直感的に、追体験できるように工夫して編集されてたな。
ただ……
質問なさった方が想定してたのって、きっと、こういう返答ではないんだよね。おそらく…。
そもそも、作品、とは言いがたいし…(;´▽`A``
で、質問意図が正確に汲み取れないというのは、おそらく、質問なさった方とわたしとの間の、何らかの違いに起因しているはずで。
質問なさった方とわたしとでは、どういう部分に違いがあるんだろう?ってしばらく考えてて、思い当たったのが……「作品世界にグッと入り込めるかどうか」、ここなのかな?って。暫定結論。
質問なさった方は、あらゆるジャンルで、作品世界にグッと入り込んで楽しめる方なのかな?って推測してみた。(合っとるかどうかは知らん。)
というのも。
わたし自身、「世間で高い評価を受けている、ファンタジー系の名作の良さを、まったく理解できない」ということがままあるんだよね。
架空生物系、ヒーロー系……こういう作品の魅力を正味でしっかり味わい尽くすには、作品世界(ときに非現実的な設定)に、自らグッと入っていくことが必要なんじゃないかって。(←門外漢なりに分析してみた)
その点、わたしは、「非現実的な設定」を乗り越えて作品世界に没頭することが、あまりない気がするのね。それで、その魅力が十二分に堪能できないのだと思う。おそらく。
だから、わたしの場合、「現実的な設定」の、”半径5m以内”のヒューマンドラマを好んで観る傾向にある。
そのなかに描かれてる感情の機微を、なめまわすような鑑賞の仕方が多いかな。。。
こんなわたしでも『ET』には号泣したけど、おそらくそれは作品世界に没頭できたからではなく、そこに描かれていたものが、生身で感じられる何かのメタファーとして機能していたからだと思う。
わたしの場合、文化的作品が”耳年増”的、”予防接種”的、”社会・心の見取り図生成”的に機能することはあれ、リアルの「感情」や「思考」に作品が先行する、という体験はないように思う。(今のところ)
ファッション的な意味合いでの「感覚」、はあるかもしれないけど。
実際、自分の手元に魔法学校の入学許可証が届いてみて初めて、魔法使い映画の魅力を解するようになる……わたしはそういうタイプの人間なんだと思う。
0コメント